船舶用

SSSクラッチは何故選択されるのか?

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SSSクラッチは、現在も運用を続ける40カ国以上の海軍によって、その信頼性が実証されています。
一方で、摩擦式クラッチは、1950年代後半に「Y-100推進システム」において共通の減速機構向けにコンバインドドライバー方式が初めて提案されて以来、多くの軍艦計画において問題を引き起こしてきました。
SSSクラッチはこうした多くの問題を解決し、堅牢で信頼性の高い運用に必要な安心感を、海軍や船舶推進設計者に提供してきました。

SSSクラッチは、機械的な原理によりかみ合い/切り離しを行うため、摩擦クラッチと異なり複雑な制御システムを必要としません。
SSSクラッチは、必要に応じて「ボーク機構」による保護を備えた自動的かつ機械的なかみ合い/切り離し機構というシンプルさによって、リスクを回避しています。
摩擦クラッチのリスクについては、David Bowie氏の優れた著書『Cruising Turbines of the “Y100” Naval Propulsion Machinery』(2010年、www.hazegray.orgにて閲覧可能)で的確にまとめられています。

巡航タービン用クラッチの性能には特に懸念があり、実際に発生した故障から、以下のような明確な原則が確立されました:

  • 摩擦のみに依存するクラッチは、艦船用の蒸気タービンプラントに伴う大出力や高回転速度には不適であることがわかりました。
  • クラッチのかみ合い時に、航行中の波によって主軸の回転速度が減速すると、その影響がギア列によって増幅される可能性があり、高速ギアラインにクラッチが設置されている場合には、クラッチの両構成要素間に過剰な加速度差が生じることがあります。
  • また、大きな慣性を持つ主機関向けの海洋用クラッチには、適切な「ロック機構」がなければ、かみ合いの瞬間に構成部品が前後にガタガタと動く「シャトル現象」が起こり、回転してかみ合う要素に損傷を与えるおそれがあります。これらの事実は、艦船用機械設計者にとって重大な問題でした。それらは当時運用されていた「Y100型」蒸気機関にも大きな影響を与えただけでなく、当時英国海軍で検討されていた新型誘導ミサイル駆逐艦および汎用フリゲート艦向けの「COSAG(蒸気・ガスタービン複合推進)」プラントでは、正しく機能するクラッチが不可欠な構成要素とされていました。

海洋技術者協会(IMarEST)は、2000年3月14日から16日にハンブルクで開催された「21世紀の海洋工学の課題」会議の報告書を発表しました。D.A.ホフマン氏とP.マイヤルデ氏は、推進クラッチの課題を的確にまとめています。

ギアボックス内で故障する可能性があるのは、もちろんギアだけではありません。歴史的に見ると、最も信頼性が低かった部品は、多板摩擦クラッチ、アクチュエーター、およびインターロックです。

多くの技術論文が、現代の海軍推進システムにおけるSSSクラッチの機能と運用経験を詳述しています。例として、モーガン・ヘンドリー氏とニコラス・ベラミー氏が共著した論文が、2016年に韓国ソウルで開催されたASMEターボ展示会で発表され、米国機械学会(ASME)から「ベストペーパー」賞を受賞しました。この論文では、SSSクラッチの詳細な経験と、将来のCODAG、CODELOG、CODELAG推進システムがどのように簡素化され、より堅牢にできるかが説明されています。

【用語集】

COSOS COmbined Steam Or Steam turbines(蒸気タービンの組み合わせの一種)
COSAS COmbined Steam And Steam turbines(蒸気タービンの組み合わせの一種)
COGOG COmbined Gas Or Gas turbines(ガスタービンの組み合わせの一種)
COGAG COmbined Gas And Gas turbines(ガスタービンの組み合わせの一種)
CODAG COmbined Diesel Engine And Gas turbines(ディーゼルエンジンとガスタービンの組み合わせ)
CODOG COmbined Diesel Engine Or Gas turbines(ディーゼルエンジンまたはガスタービンの組み合わせ)
CODELOG COmbined Diesel ELectric Motor Or Gas turbines(ディーゼル・電気モーターまたはガスタービンの組み合わせ)
CODELAG COmbined Diesel ELectric Motor And Gas turbines(ディーゼル・電気モーターとガスタービンの組み合わせ)